はじめに: ローリング平均とは
ローリング平均(または移動平均)は、データ分析においてよく使用される手法の一つです。これは、一定の期間(ウィンドウ)を設定し、そのウィンドウ内のデータの平均値を計算することで、データの中心傾向を把握するための方法です。
ローリング平均は、時間によって変化するデータ(時系列データ)のノイズを減らし、データのトレンドを明確にするのに特に有用です。例えば、日々の気温、株価、ウェブサイトの訪問者数など、時間とともに変動するデータに対してローリング平均を適用することで、ランダムな変動を平滑化し、長期的なトレンドを視覚化することが可能になります。
次のセクションでは、Pythonのデータ分析ライブラリであるPandasを使用して、ローリング平均を計算する具体的な方法について説明します。Pandasは、データの操作と分析を容易にする強力なツールであり、ローリング平均の計算も簡単に行うことができます。それでは、次のセクションで具体的な手順を見ていきましょう。
Pandasのrolling()関数の基本
Pandasのrolling()
関数は、データフレームやシリーズに対してローリング(または移動)ウィンドウ操作を適用するための強力なツールです。この関数は、指定したウィンドウサイズに基づいてデータの部分集合(ウィンドウ)を作成し、そのウィンドウ上で統計的な操作(平均、中央値、標準偏差など)を行います。
基本的な使用方法は次のとおりです:
df.rolling(window_size).function()
ここで、df
はデータフレーム、window_size
はウィンドウサイズ(つまり、各操作が考慮する連続した行の数)、function()
は適用する統計的な操作です。
例えば、3日間のローリング平均を計算するには、次のようにします:
df.rolling(3).mean()
このコードは、各行について、その行とその前の2行(合計3行)の平均を計算します。結果は新しいデータフレームで、元のデータフレームと同じ形状ですが、各値がローリング平均に置き換えられています。
次のセクションでは、具体的なデータセットを用いて、このrolling()
関数の使用方法を詳しく見ていきましょう。それでは、次のセクションで具体的な手順を見ていきましょう。
データセットの準備
ローリング平均を計算する前に、まず適切なデータセットを準備する必要があります。ここでは、PythonのPandasライブラリを使用してデータセットを作成し、ローリング平均を計算するための準備を行います。
以下に、ランダムなデータを含むシンプルなデータフレームを作成する例を示します:
import pandas as pd
import numpy as np
# 日付範囲を作成
date_range = pd.date_range(start='1/1/2020', end='31/12/2020', freq='D')
# ランダムなデータを生成
data = np.random.randint(1, 100, size=len(date_range))
# データフレームを作成
df = pd.DataFrame(data, columns=['Value'], index=date_range)
このコードは、2020年の各日に対して1から100までのランダムな整数値を生成します。データフレームdf
は、これらの値を含む列Value
と、対応する日付をインデックスとして持ちます。
このようにして作成したデータフレームを使用して、次のセクションでローリング平均の計算方法を詳しく見ていきましょう。それでは、次のセクションで具体的な手順を見ていきましょう。
ローリング平均の計算方法
前のセクションで作成したデータフレームを使用して、ローリング平均を計算する方法を見ていきましょう。Pandasのrolling()
関数を使用して、特定のウィンドウサイズでのローリング平均を計算します。
以下に、7日間のローリング平均を計算する例を示します:
df['7_day_rolling_avg'] = df['Value'].rolling(7).mean()
このコードは、Value
列の7日間のローリング平均を計算し、新しい列7_day_rolling_avg
に結果を保存します。ウィンドウサイズは7に設定されていますので、各行の値はその行とその前の6行(合計7行)の平均値になります。
ローリング平均を計算するときには、データの最初の数行(ウィンドウサイズ-1行)にはNaN(Not a Number)が入ります。これは、ウィンドウサイズが足りないために平均を計算できないためです。
次のセクションでは、ローリング平均の応用例として、グループごとのローリング平均の計算方法を見ていきましょう。それでは、次のセクションで具体的な手順を見ていきましょう。
ローリング平均の応用: グループごとのローリング平均
Pandasのrolling()
関数は、グループ化されたデータに対しても適用することができます。これにより、各グループごとにローリング平均を計算することが可能になります。これは、異なるカテゴリや期間ごとのトレンドを比較する際に特に有用です。
以下に、グループごとのローリング平均を計算する例を示します:
# カテゴリ列を追加
df['Category'] = np.random.choice(['A', 'B', 'C'], size=len(df))
# グループごとの7日間のローリング平均を計算
df['7_day_rolling_avg'] = df.groupby('Category')['Value'].rolling(7).mean().reset_index(0, drop=True)
このコードは、まずランダムに’A’、’B’、’C’のいずれかを値とする新しい列Category
をデータフレームに追加します。次に、groupby('Category')
を使用してデータをカテゴリごとにグループ化し、各グループに対してrolling(7).mean()
を適用して7日間のローリング平均を計算します。reset_index(0, drop=True)
は、マルチインデックスをフラットなインデックスに戻すために使用されます。
以上で、Pandasを使用したローリング平均の基本的な計算方法とその応用について説明しました。ローリング平均は、データのトレンドを理解するための強力なツールであり、Pandasのrolling()
関数を使用することで簡単に計算することができます。それでは、次のセクションで具体的な手順を見ていきましょう。
まとめ
この記事では、Pythonのデータ分析ライブラリであるPandasを使用してローリング平均を計算する方法について詳しく説明しました。ローリング平均は、時間によって変化するデータのトレンドを把握するための強力なツールであり、Pandasのrolling()
関数を使用することで簡単に計算することができます。
具体的には、以下の内容について説明しました:
- ローリング平均とは何か、その計算方法と利用場面
- Pandasの
rolling()
関数の基本的な使用方法 - データセットの準備方法
- グループごとのローリング平均の計算方法
これらの知識を活用することで、データ分析の幅が広がり、より深い洞察を得ることができるでしょう。データ分析におけるローリング平均の重要性を理解し、Pandasを使って効率的に計算する方法を学べたことで、あなたのデータ分析スキルが一段と向上したことでしょう。それでは、次のデータ分析プロジェクトでの成功を祈っています!